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5年 総合   『地メダカから「多自然川づくり」を考える』
〜 2009年7月20日 関西レディースフレッシュセミナー D表検定指導案 〜



飯田 尚子(TOSS三重 TOSS-AGAIN)

 川越町では区画整理に伴い、用水路や河川のコンクリート化が進んでいる。その結果、メダカが町内から姿を消してしまった。
 その実態を知らせ、メダカと水辺の生き物を復活させるべく「多自然川づくり」について考えさせたい。
 川の持つ価値に光を当てることは川の観光化にもつながるといえる。


1. 指導計画(7時間)

 ・メダカの生態や、生息場所、地元の様々な生き物について知る。(1時間)
 ・メダカの生息場所を実際に調べ、川越町の川や用水の実態に気づく。(2時間)
 ・多自然川づくりの改修手法を知り、その効果について考える。(1時間)(本時)
 ・多自然川つくりの実践例について調べる(1時間)
 ・川越町の多自然川づくりについて調べる(2時間)




2. 単元について

 水田の生き物を代表するメダカは、童謡に歌われるなどして親しみやすく、5年生の理科でも詳しく学習する身近な魚である。
 メダカは春先になると越冬場所から農業用水が満たされた水路を通って分布を拡大し、春から夏に水田などの止水域で産卵する。
 稚魚はプランクトンなどのえさが豊富な水田内で生育し、中干しの時期に再び水路にもどり、流れの緩やかな場所で過ごす。
 そして、秋から冬にかけて水温が下がり始めると深みに移動し、越冬する。
 メダカはこのように水田とその周辺でいつも生活をしている。
 メダカの学名(Oryzias latipes latipes)がイネ属の学名Oryzaに由来していることからも、メダカが水田と深い関係にあることがわかる。
 新指導要領では、5年の理科に次の記述がある。


 2 内容
  B 生命・地球
   (2)動物の誕生
    魚を育てたり、人の発生についての資料を活用したりして、卵の変化の様子や水中の小さな生物を調べ、
    動物の発生や成長についての考えをもつことができるようにする。
    イ 魚は水中の小さな生物を食べ物にして生きていること。


 現行の指導要領では「魚」と「人」は選択であったが、新指導要領では必修となり、両方を扱うことになった。
 また、イについては新設された。
 このことからも、新指導要領の目標にある、自然の事物についての「実感を伴った」理解が成長過程の子どもたちにとって重要であることがわかる。
 メダカは、本来繁殖力の強い生き物であり、ため池や水田だけでなく、いろいろな生活排水が混ざり込み、富栄養化している排水路でも確認することができる。
 全く水の行き来のない住宅地の水たまりでメダカが繁殖した原因を調べたら「メダカが空をとんだ」という結論になったということもあるという。
 もちろん親メダカが空をとぶわけではなく、メダカの卵の状態で空をとぶのである。
 メダカの卵には付着糸という長い糸があり、産んだ卵を水草などにからみつける。
 卵は11日くらいで孵化して稚魚が誕生する。
 メダカの卵が水からでるとすぐ壊れるような卵では空をとぶことはできないが、メダカの卵は受精すると表面がすぐ硬くなり、水から出してもすぐに死ぬことはない。
 メダカは毎日10〜30個の卵を産むが、メスがたくさんいて毎日卵を産み続けると夏の間に一つのため池や水田で、卵は何万個も産み付けられることになる。
 メダカが卵を産む浅い水辺や水田は、水鳥や昆虫などがえさを食べるためにやってくるので、体にメダカの卵をつけて運んでいくという。
 植物の種が動物の体について運ばれることは知っていたが、メダカの卵も空をとんで運ばれることがあるというのは驚きだった。
 このような生態系の仕組みをぜひ、子どもたちにも知らせたいと考えた。
 このように繁殖力の強いメダカが、環境省のレッドデータブックに絶滅危惧種として記載された。
 川越町でも、当たり前のように用水にいたメダカの姿が最近見られない。
 この単元を通して子どもたちにこの事実を知らせたいと考えた。
 その大きな原因は用水や川のコンクリート化にあり、人々が親しんできた水辺が町内から消えてしまっている。
 子どもたちにその実態を観察させ、メダカがまた住めるような町にするための方法について考えさせたい。
 理科で学んだことを基にしながら、地域の水田や用水、ため池や小川を調べることで、身近な生き物を通して地域を見る目を持たせたいと考えている。
 そして他の地域で成果を上げている「多自然川づくり」の取り組みについて調べ、川越町の川の様子と比較しながら、
 これからの町づくりをどのように進めていけばよいのか考えさせていきたい。





3. 本時の展開

発問1 「メダカが空をとぶ」本当だと思う人? 嘘だと思う人?

 どちらかに手を挙げさせる。
 

説明1 本当の話です。この本に書いてあります。

 「空とぶメダカ」の本を紹介する。

発問2 全く同じDNAをもつメダカが別の池や水たまりで見つかったという事実があります。なぜと思いますか。

 指名する。

説明2 実は空をとぶのはメダカの卵です。メダカの卵には付着糸という長い糸があります。
      これが水鳥などの足にからみついて空をとび、全く違う場所に運ばれることがあるのです。
      メダカはこのように卵をたくさん産み、いろいろな方法で子孫や仲間を増やしてきた繁殖力の強い生物です。

説明3 このように繁殖力の強いメダカですが、現在絶滅危惧種といってこのままではいなくなってしまうおそれがある動物に指定されるほど減少しています。

発問3 「川越メダカ」です。川越町にしかいないメダカです。今はもう町内にはいなくなってしまいました。なぜだと思いますか。

 指名する。
 川や用水の2種類の写真を提示する。

発問4 どちらがメダカにとって住みやすいと思いますか?

 挙手させる。

説明4 メダカはよどんだところ、流れのあまりない用水を好みます。

発問5 川越町の水田です。コンクリート製のU字溝です。
      最近整備された川です。どう思いますか。

 過去と現在の2枚の写真を提示し、挙手させる。

説明5 最近、昔の川のように改修されました。
      豊橋市の朝倉川です。川の水際線をわざと蛇行させています。

説明6 このような川の改修方法を「多自然川づくり」といいます。
      川や水辺をこのように改修することで、水辺に人が集まり、いなくなっていた生き物も川に戻ってきます。
      川の持っている価値が高まり、人が集まるようになることは川の観光化ともいえるのです。
      町内の「多自然川つくり」についてさらに学習を進めていきましょう。





《参   考》

・「三重県レッドデータブック2005」(三重県)
・「空とぶメダカ 絶滅危惧種 メダカの不思議」(中村滝男著 ポプラ社)
・「田園の魚をとりもどせ!」(高橋清孝編著 恒星社厚生閣)
・「メダカが田んぼに帰った日」 (金丸弘美著 学習研究社)
・「メダカが消える日 自然の再生をめざして」 小澤司著 岩波書店)
・「メダカ観察事典」(偕成社)
・あいちの多自然川づくり www.pref.aichi.jp/kasen/kasen/kasen.../tashizen.html
・「多自然川づくり」という河川改修は観光手法につながるwww.quon.asia/yomimono/business/.../07/.../1872.php
・大阪の多自然川づくりについてwww.pref.osaka.jp/kasen/tasizen/naturalriver.htm



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